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アイドル漫画じゃないアイドル漫画『ミリオンドール』の新しさ

日曜日にアニメ『ミリオンドール』の第0回ファンミーティングに行ってきました。わたしがこの作品の原作に出会ったのは2013年のハロプロ楽曲大賞でのことなので、とても感慨深いです……というよりはむしろいまだに信じられない気持ちでいっぱいです。楽曲大賞っていつも物販のコーナーがあってアイドルにかんする同人誌とかを売ってるのですが、そこで第1話の試し読みと題された無料配布本をもらったのがきっかけでした。そのときもうすでにわたしは声優のおたくもやっていましたが、まさかそのときもらった漫画がアニメになってそのイベントに行くことになるなんて当然想像もしてなかったです。
ミリオンドールはアイドルにまつわるもろもろを題材にした作品です。というと、あーまた二次元アイドルものね、はいはいもう飽きたよそういうのは、的に捉えられるかたも多いでしょう。実際ここ2,3年で男女問わずアイドルをテーマにした、あるいはメインに据えなくとも設定の一部にアイドルを取り入れた作品は雨後の筍のように増え、わたし自身もそれらに少し食傷気味なのは否めません。ただ、それらのアイドルものはどれもアイドルたち本人、またはその周囲のスタッフを中心において描いていて、当たり前ながらおたくの側に焦点が当てられることはあまりないですし、その描かれ方にはそれほどバリエーションがない気がします。ゆえに、実際にアイドルオタク活動をしている人間から見ると、二次元アイドルものは作品自体のクオリティとは別のところで、アイドルであるのだけどどこか自分たちの知っているアイドルではない、なんかどうしてもひとこと物言いをつけたくなってしまう雰囲気がありがちです。
ミリオンドールの新しさは、立場をぐるっと逆転させてアイドルではなくアイドルオタク、それも規模の小さい(いやがおうでもよく来てる人間を把握できてしまう)地下アイドルのおたくの視点から描かれた物語だというところにあります。そこで描かれる人間模様にはときには嫌になるような醜さがありながらも、あーこういうやついるいるーと言いたくなるような圧倒的なリアリティがあります。在宅と現場系の戦いという構図も、どちらにもそれぞれの正義があり、一概にどちらが正しいというものでもないですし、またなにをもって勝ちとするかがわからないという点も物語を単純な図にはしていなくて展開を読めなくさせています。主人公は在宅のカリスマですが、対する現場のカリスマ・リュウサンにもそれなりの想いがあり、物語自体がどちら側の視点からも描かれるため敵役のはずのリュウサンにも感情移入してしまいそうになるのは、作者のあいさんのアイドル文化への深い理解があってこそでしょう。女オタ喰いまくりのクソピンチケや謎の半オタ関係者なんかも妙にあるある感があります笑 もちろんアイドルあってこそのおたくではあるのですが、おたくの部分のリアリティがしっかりしているからこそ、かれらが追っているアイドルたちもよりリアルに感じられてくるのです。
また、おたくといえばとかくジャーゴン(という単語自体もジャーゴン化しているんじゃないかという気がしてきた。おたくのあいだのみで通じる専門用語の意)を使いたがる生き物ですが(というかこのダイアリーもひとのこと言えないよね。。)、そういうおたくのジャーゴンがふんだんに盛り込まれていることもリアリティを強化しています。というとアイオタだけがおもしろい作品なんじゃないかと思われそうですが、おたくどうしの複雑な思惑の絡み合いや現場での人間関係のこじれはおたく関係なく共感できるところでしょうし、ところどころには用語解説も付されています。なにより、作中で多用される「現場」「在宅」をはじめ、「汚いMIX」「影響力のあるヲタ」など、アイオタのジャーゴンっておたくじゃなくとも、意味がよくわからずとも無駄に使ってしまいたくなる魔力があると思います。
また、作中のライヴシーンでは実在する曲が印象的に使われています。その選曲ひとつとってもよく練られていて、たとえば最初のほうで3人組のローカルアイドル・イトリオが「大きい瞳」を歌いますが、それだけでも強がりな元ヤン・ほわほわしてるけど芯の強い子・歌は下手だけどかわいい、という3人のキャラクターを過度に説明する必要なく匂わせることができていて効果的です。もちろん登場する曲を知っていればそういうふうに勝手に想像して楽しむこともできますし、曲を知らなければていねいな楽曲解説もついているのでそこから調べてみて、漫画を読んだときのイメージと実際の曲調を答え合わせしてみるという楽しみ方もできると思います。アニメではライヴシーンはオリジナル曲になるようなので、またこのあたりは違った見え方もしてくるんじゃないかと思っていますし、それはそれでまた物語が新しく感じられそうで楽しみです。


ここまでは漫画の魅力を自分なりに語ってみましたが、ファンミーティングではキャストのみなさんそれぞれ見た目からしてほんとうに作中から抜け出してきたかのように役柄のイメージと馴染んでいて、正直おおお!とびっくりしました。とくにマリ子役の伊藤美来さんはそのまま歌もステージでの振る舞いも上手く、なおかつ濃いおたくをたくさん抱えていそうでしたし、イトリオのみなさんもふつうにアイドルとしてステージに立っていておかしくない華があって、ニュージェネレーションだなあ……としみじみ感じました。まだアフレコに入っていないかたもいたということで、役柄に対して模索してる途中という感じもありましたが、みなさんそれぞれに作品に対して真摯に向き合っていることが伝わってきました。おたくを必要以上にバカにするでもなく、かといってリスペクトはありつつも必要以上にまつりあげるでもなく、アニメもバランスのとれた作品になっていけるんじゃないかという期待すらわきました。正直題材が題材なので、アニメ化にはかなり不安があったのですが、キャストのかたがたを見ていたらそんな心配は杞憂だったなと思いましたし、むしろいまはアニメですう子やリュウサンたちがどんなふうに動くのかはやく見てみたくてしかたないです。ストーリーものなのに5分アニメっていうのがちょっとだけ残念ですが、30分でやったらストック使いきっちゃうかもしれないしそのぶんさくっと見られて薦めやすいと思っておくことにします笑 そんな『ミリオンドール』コミックス1・2巻は今週26日発売です! 続きはwebで読めます!エラー - GANMA!(ガンマ) みんな! 古参づらするならいまのうちだよ!!
って書くとなんかわたしがどこかの廻し者みたいなんですが笑、全然わたしに利害関係ないのにこんな記事を書いてるのは、ひとえにキャストのみなさんの真剣さと作者のあいさんの作品への熱意に心打たれたからです。わざわざ放映前のアニメのイベントに、心のこもった長文の直筆メッセージを配布してくれる漫画家なんてそうそういません。その熱意が少しでも報われるといいなあと思っていますので、、