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居場所を探す物語 ユージン・セブンスタークと梅原裕一郎をとおして見る『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』

おくればせながら、オルフェンズぶじ最終話を迎えられてお疲れさまでした! また全体の感想などはきっちり書きたいなと考えてるんですけど、とにかく個人的にユージン・セブンスタークというキャラクター(と、裕一郎さん)に思い入れがありすぎて、ここを一度吐き出しておかないと気が済まないということで、ユージンに寄った視点での感想など。


ユージンというキャラクターを一言で表すならたぶん「器用貧乏」。頭もそれなりに良く、体力もそれなりにあり、ヘタレ気味ではあるけど度胸もないわけではなく、見た目もそれなりに良い、だけど突出したものがあるかと問われればなにもない。ユージンって、とくに序盤〜中盤はメインキャラとは言いつつも実は鉄華団のなかでいなくても物語が成立するキャラクターだったんじゃないかと思うんです。
オルガと三日月は言わずもがな、昭弘は三日月に次ぐ戦闘面でのエースかつヒューマンデブリとしての葛藤、弟との再会と別離、シノは明るくおちゃらけたムードメーカー、アトラは食事や日常生活を支える世話係、ビスケットは参謀的存在としてオルガを諫め、また鉄華団のなかでも数少ない家族との関係性が描かれたりビスケットの死によって物語が大きく動いたりと、それぞれ団のなかでの役割もしくは物語を動かす要素が与えられています。それにくらべると、ユージンは(最初は途中で裏切る設定だったからかもしれませんが)ナンバー2というわりには、中盤まではあまり目立った部分がありません。というよりも、実際けっこう活躍はしてるんだけど、それがなんか形としてうまく評価されないというか。それはおそらく本人もわかっていて、だからこそ圧倒的な求心力をもつオルガに反発してみるものの、かなわないことも頭では理解している、だけど気持ちとしてどうしようもない、みたいに描かれていると感じていました。
そのひとが極端に劣っているというわけではないのだけど、いつもいつも自分のすぐ隣に飛び抜けた存在がいて、どうしてもいちばんにはなれない。という種類の人間がこの世には確実にいて、それはまずこれを書いている自分がずっともうそういう人生を生き続けてきているのですが(まあわたしはそこまで優秀とは言えないのであれですが)。アイドルにしても、みんなが実力は認めてるけどでも同時にみんな名前を挙げるのは二番目、みたいな子に惹かれてしまう面があります。はっきりとした劣等生ならむしろ素直に生きられる面もあるのでしょうが、中途半端に実力もプライドもあるせいで、悔しいけど自分が上に行くことはできないとわかってるけどでも、みたいな鬱屈した屈折が生まれがちで、そういう点ではユージンには激しく共感しつつこのキャラクターはどうなっていくんだろうと思ってました。というかぶっちゃけ絶対途中で死ぬと思ってたし。


ユージンを演じる梅原裕一郎くんは、大学2年のときに養成所に入り年度末に事務所のオーディションに受かって、大学4年になる年に声優としてデビューします(合ってるよね?)。2年目の終わりに初めて30分アニメでレギュラーになり、あれよあれよという間にたくさんの役をもらい、そして3年目、2015年の10月に始まったのがこの鉄血のオルフェンズです(同じクールには初の主演もやりました)。準所属、預かり、準預かりなどの果てしない世界や、何年経ってもなかなかレギュラーが決まらない数多くのひとたちのことを考えれば、これはものすごいスピード感だし、一見順風満帆な人生に思えます。
裕一郎さんは芝居にたいしては真摯に取り組んでるひとだとわたしは思ってます。けれど、上述したように下積み期間も短ければ、だれが聞いても一発で圧倒されるような才能の持ち主というわけでもないです(むしろ水面下で努力してるけどそれを見せないタイプなんだと個人的には勝手に感じてます)。ほかの同世代で活躍している声優たちは踏んでる場数も違うし、そもそも生まれ持った才能からして魑魅魍魎のようなひとたちが多いです。そういうなかに放り込まれて、同列に評価されていくのは孤独でだれにも共有されない闘い(とかいうと大げさですが)なんじゃないかと思うのです。
そもそも、なぜ裕一郎さんが若手のなかで急激に名前が売れたかといえば、そこに優れた容姿が影響しているという事実は否定しようがないです。もちろんそれはほんとうに最初のきっかけでしかなく、いくら見た目がよくてもそこから仕事が続くかどうかはそのひとの努力次第ですが、どうしてもかれのことを語るとき、そこには容姿の話がつきまといます。顔がいいのは武器のように見えて実はとてつもないディスアドバンテージでもあって、どれだけ役について試行錯誤したとしても、それは顔の話に回収されてしまい、ときには顔だけ声優と言われてしまう。傍で見ているだけのわたしですらときどきもやもやするのだから、本人はそれはいろいろ思うところあるでしょう(とかいってあんがいなにも気にしてないのかもしれませんが、でも、うーん)。


放送初期のころ、裕一郎さんはユージンについて自分とはあまり似たところがないとたびたび言っていました。最初期のユージンはガラの悪いチンピラとすら語られていたくらいだし、自分としてもかっこつけたくていきってる兄ちゃんという印象だったので、そのときは確かにそうなのかもなあと思っていました。また、開始前はユージンはオルガにやたら楯つくキャラというふうに紹介されていました。それは決して間違ってはないのですが、実際の描かれ方を見てみるとただやみくもに反発するというよりは、もっと対等に近い感じで意見してるという感覚がありました。
25話終わってみて、鉄血のオルフェンズという作品は鉄華団の面々それぞれが自分のいるべき場所を探す物語だったとわたしはいま考えています。ビスケットのように志半ばでそこにたどり着けず斃れた者もいれば、まだ幼いタカキたちのようにそれを探している途中の者もいるけれど、そのなかでユージンはちゃんと自分の居場所、自分の立ち位置を見つけられたひとりなのではないかなと。最終的にユージンは機転を利かせて戦艦を2隻同時に操縦し(その時点で全然平凡な人間ではないのですけどね)、またオルガたちのピンチを救います。それは能力面とかやってることが変わったというよりも(だって戦艦の操縦自体は最初からやってたし)、自分には自分のできることがあるしそれをやるしかないという気持ちの吹っ切れが大きかったのだと思います。回り道のように見えてそれによって結果的に、まわりからの信頼もついてきたわけだし。
裕一郎さんとユージンの共通点は実は意外とたくさんあって、正当に評価されない自分に意識的にしろ無意識にしろ屈折を抱えている(ように見える)ところ、自分の実力をきちんと把握していていざというときにはしっかり決められるところ、そしてなによりふだんクールに見せているけどほんとうはとても人間くさくかわいいところ、など。話が進むにつれ、ユージンの内面の葛藤が少しずつ見えてくるにしたがって、それがだんだんと見えてきました。と同時に、最初はガンダムを知らず優等生的ともとれる発言しかなかった裕一郎さんの言葉に、だんだんと血が通っていくようにも感じられていきました。
最終回直前には、自分とユージンは意外と似ているのではないか、ということも言っていて、それはきっとこの半年のあいだに裕一郎さんがこの鉄血のオルフェンズという作品と、そしてユージン・セブンスタークというキャラクターと、深く向き合ったからなんじゃないかなと思ったし、べつに答え合わせしたいわけじゃないですが自分の感じたこともあながち間違ってはなかったのかなと少し嬉しくなりました。まだまだ今後もイケメン声優という評価が先に立ちはするのだろうけれど、ユージンと同じように少しでも裕一郎さんが声優界のなかでの自分の立ち位置、自分のいるべきだと思える場所に近づけていればいいなあと思います。


いや真面目か!!! あー恥ずかしい。とりあえずユージン死にも裏切りもしなくてほんとうによかった。ていうかこれ書いてたらまた思い出してきたけどユージンほんとにかっこいいしかわいいなあ、「愛してるわユージン、あんたに会いたいの♡」なんてほんっと最強ですよあー。えーと、オルフェンズ全体の感想は今月中くらいにはもう一回書くつもりです、、