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なぜ手をつなぎたくないのか

0. 現在行われているキスマイのコンサートツアーでは、本編の最後の曲で観客どうしが手をつなぎ頭上に掲げ、サビまるまるひとつぶんくらいそのままの状態で横揺れさせられます。そしてその演出はメンバーからのお願いという形でおこなわれます。


1. まず知らないひとといきなり数十秒〜一分近くのあいだ手をつないだままの状態でいるということ自体が、そんなに心理的ハードルの低い行為ではないと思うのです。日常生活でいきなりそんな事態に陥ることがあるでしょうか? なるほどコンサートという空間は非日常だからそのような論法を持ち出すのはナンセンスかもしれません。しかしわたしたちは手をつなぐためにコンサートに来ているわけではないのです。


2. 二階堂くんは言います、「ペンライトもうちわも置いて隣のひとと手をつないで」と。でもわたしたちはそれなりに安くはないチケット代を払ってそこに来ています。本来どんな楽しみ方をしたってこっちの自由じゃないんでしょうか。と言うとじゃあペンライト芸やコール、振り付けだって同じことじゃないかと言われるかもしれません。が、それらはしたければすればいいし、嫌ならしなければいいだけの話です。しかし手をつなぐという行為にその理屈は成り立ちません。なぜならそれは相手がいなければできない、ひとりで完結しない行為だからです。


2.1 少なくともわたしはアイドルを見に行くとき、あくまで好きなアイドルと自分との一対一の世界を求めています。べつにコミュニケーションをとりたいとかそういうことではありません。ただ、ひたすら好きなアイドルを追いかけているところに邪魔が入ってほしくないのです。そこに手をつなぐという行為が持ち込まれることは、ノイズにしかなりません。


3. 『ガッチャマンクラウズインサイト』というアニメがあります。人間の感情を可視化できる宇宙人がみんなの気持ちをひとつにしようと首相になりますが、感情の色が全員同じにならないことに苦しみ、最終的にくうさまという化け物を産み出してしまいます。くうさまはまわりと同じ行動をとらなかったり、場の空気に反する発言をしたりした人間を飲み込んでいき、結果的に世間は思考を停止し表面上"ひとつ"になっていきます。


4. 「メンバーがお願いしてるんだから聞いてあげなきゃ!」というのはただの思考停止だと思うのです。アイドルだって絶対的に正しい存在ではないのです。なんとかくんが言ってるんだから本意ではないけど従おう、というのは従わないやつはファンじゃないという発想にすぐ繋がります。そうするとまともに意見しようとするひとたちはそのうちあほらしくなって去るでしょうし、イエスマンしか残らないから本人たちからすればひとつになったように思えるのかもしれません。


5. そもそもどうしてひとつにならなきゃいけないんでしょうか。アイドルの現場のいいところって、観客が思い思い自分の好きな様式で楽しんでいても問題ないところだとわたしはいままで思っていました。ペンライト振ってても、双眼鏡ガン見してても、フリコピしてても、ノリノリで踊りまくってても、腕組んで棒立ちでも、ひたすらメモとってても、ひとに迷惑をかけなければ誰もほかのおたくなんて気にしないのがアイドルの現場だと。なぜならほかのおたくなんて視界に入れてる暇ないですから笑 でも、なんだかときどき強い同調圧力を感じるときもちらほらあります。たとえばペンライトを目の前に来たメンバーの色にそのつど変えるとかは、行動原理は理解できますが、主体性がないなと思うしわたしはDDが嫌いなので自分では絶対やりません。だからといってべつにやってるひとに無理やりやめろという気もありませんし、それこそべつに好きにすればいい話だと思ってます。ただ、それがいつしか「このメンバーが目の前に来てるんだから色変えなきゃ! 変えないやつは空気読めない!」ってなったら怖いなあと思うのです。


6. みんな手をつないでひとつになろう、というのはあまりに表面的すぎるうえに、全体主義的な思想が過ぎると感じました。手をつなぐこともそんなに楽しくはないですが、それ以上にその主張自体がわたしには受け入れられなかったのです。みんなが無理やり同じことをして"ひとつ"にならないと生まれない一体感なんてそんなに価値があるものでしょうか。大げさかもしれませんが、やっぱりこれは手つなぎファシズムでしかないと思うのです……。


6.1 しかしなにがいちばん心が痛むってこれを『お願い』するのがだれあろうほかならぬ二階堂くんだということなのです……。わたしだってそりゃ好きなアイドルが言ってんだから無条件に従えればいちばん幸せだって思いますよ。でもやっぱりわたしにはアイドルを崇拝の対象にすることはできないし、もっと言うとあなたたちは10年来の仲間と手をつないでるからいいけど知らないひとと手をつなげますか!? ずるくないか!? って話ですよ……。


7. 端的に言うと、究極的にはわたしは好きな男の子としか手はつなぎたくないです。