過去ログ

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カウコンはそのなかでは前のほうとはいえドームの2階だったし、あたしの持ってる双眼鏡もそんなに倍率が低いわけじゃないとはいえ防振でもなくめちゃくちゃ明るいわけでもなく、しかももう長いこと雑に使ってるためにそんなにくっきりはっきり!という視界でもないのだけど、なぜか……あれなんていうんですか。三塁側の、小島? 横花の先に張り出したステージにひとり立って歌っているとつかくんの姿が、なぜかその瞬間だけものすごく鮮明に映って、そのときに、言葉にはできない感覚があたしを襲ったのだ。陳腐な言い方をすれば、かっこよすぎて震えた、というんだろうか……。もちろんそれでなにも間違ってないのだけど、そういうふうに言ってしまうと少し離れてしまう。とにかく、ただただそれははっきりとあたしを貫いた。こういう奇跡的な瞬間に出くわすためだけに生きてると言っても過言ではないし、特別なことに理由は存在しなくて、ただ、特別であるという事実だけがそこにあるんだとそう思った。