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超個人的男性声優楽曲大賞2016(後編)

書くのが遅くなったのは帝劇に行ったら我を忘れて高まり散らしてしまったからです。というわけでやっとこさ10位から1位です。。




10. Gray Zone / 野島健児
作詞:松井五郎 作曲・編曲:藤谷一郎
Between the lines』2016.5.2 NZ-project
声優だからこそできる音楽、というものを考えたときにひとつの方向性となりうる回答を提示している作品だと思います。前作では朗読と歌がある程度まだ切り離されている感がありましたが、今作ではジャジーサウンドとセリフでもなく歌でもない、しかし完全にトラックと切り離された朗読ともまた違うポエトリーリーディングが渾然一体となり、ある種不穏な緊迫感のあるディストピアSF的な世界を描き出しています。


9. ソラニ×メロディ / 寺島拓篤
作詞:寺島拓篤 作曲:佐藤純一 編曲:fhana
『0+1』2016.5.11 ランティス
ドラマチックなピアノで始まるイントロからしてなにかが起こりそうな予感をさせる一曲。シンプルなピアノとギターのロックと思わせてじつは細部まで巧妙に練られています。サビの"遥かそびえる山も七つの海も"の『も』の当て方が素晴らしい。2番はメロディが違ってこの部分がとくに強調されないんですが、そこがまた憎らしい。ある種一服の清涼剤的な感覚すらありますが、(もはやこのひとの場合しかたないんですが)いかんせん歌い方がくどい……。


8. Roug:e / 篁志季(CV:江口拓也)& 村瀬大(CV:梅原裕一郎
作詞・作曲・編曲:滝沢章
SolidS ユニットソングシリーズ COLOR [-RED-]』2016.3.25 ムービック
ベースはシンプルな四つ打ちなのですがそこにサイケな上モノが乗ることにより頭のなかにぐるぐる廻りつづけるような中毒性が生まれています。もちろんじょんの曲であるからしてハモリも張り巡らされているのですが、歌っているふたりとも低音なことによってさながらそれがベースの一部であるかのような独特の感覚を生み出しています。派手な展開があるわけでもないのですが、なぜか6分近い曲の長さを感じさせないのも恐ろしい。


7. 歓迎☆トゥ・ウィンク雑技団 / 2wink
作詞:Mel* 作曲・編曲:矢鴇つかさ
あんさんぶるスターズ! ユニットソングCD Vol.6 2wink』2015.12.23 フロンティアワークス
双子という存在を表現するさいに、いくつかのアプローチが考えられますがこの作品の場合では一人二役という手法をとっています。ただでさえ微妙な演じ分けが要求されるわけですがさらに歌となると語尾や喋り方で差異をつけるという方法が使えないため、いかに自然にしかし確実にふたりが歌っていることを表現できるかという難題が要求されます。しかしてそれをやってのけてしまったのがこの2winkだと思います。どこか中華風というかオリエンタル風味なスピード感ある曲に、同じようでほんの少しだけずらされている歌声のさりげなさ。もう一曲の「シュガー・スパイス方程式」もネオ渋谷系を思わせるキュートなポップでたまらないです。


6. ライア・クライア / SolidS
作詞・作曲・編曲:滝沢章
SolidS ユニットソングシリーズ COLOR [-WHITE-]』2016.10.28 ムービック
おまえ何曲ムービックの曲入れてんだよ!というクレームが来そうです。すみません、自覚はしてるんです……。チルアウトという言葉がふさわしい静謐なトラックにあくまで淡々と進む展開、抑えた歌声は逆説的に内に秘めたエモーショナルさを思わせます。ララーララーというコーラスのまるで螺旋階段に迷い込む感覚やどこか讃美歌に近い印象は初期のGrowthを思わせるところもあります。しかし静かな美しさを湛えながらもどこかでぎりぎり世俗にとどまっているのがこのグループならではなのでしょう。


5. スリム・ボーイ・スリム / ひょろっと男子
作詞:松藤量平 作曲・編曲:TSUGE
『ひょろっとらぶ』2016.11.16 文化放送
まさに猥雑な深夜のAMラジオを思わせるような、いい意味でチープなグルーヴ感のある一曲。どこか力の抜けたトラックにはそれこそなんとなくジングル的な印象もあります。いままでのラジオでのできごとを詰め込んだ歌詞は言葉数多くもラップまでいかない、しかしセリフでもない、といってポエトリーでもない、不思議なたたずまいです。


4. Dance with Destinies / 立華リツカ(CV:茜屋日海夏)、立華リンド(CV:羽多野渉)、鉤貫レム(CV:斉藤壮馬
作詞:金春智子 作曲・編曲:藤田淳平
『Dance with Destinies』2015.12.25 エイベックス・ピクチャーズ
曲が進むにつれて一人また一人と退場していき、最終的に茜屋さんのソロになってしまうのですが、そこに至るまでの3人の歌声それぞれの異常な説得力といったら。"男性"声優楽曲大賞ではあるのですが茜屋さんの歌声は聴くほうを黙らせてしまう力をもっていると思います。しかしその圧倒的なまでの力と拮抗しうる男性ふたりも負けてはいません。結果的に聴き終わったあとも思わず放心状態になってしまうほどの美しさがここにはあります。


3. 0+1 / 寺島拓篤
作詞:寺島拓篤 作曲・編曲:Shinnosuke
『0+1』2016.5.11 ランティス
声優フューチャーベースとはまさにこの曲のことを言うのでしょう。つねづね男性声優楽曲のモードは2周遅いと言ってきましたが、もはやそれは過去のことなのかもしれません。随所に挟まれるエディット(イントロアウトロだけでなくサビ自体もエディット的と言えなくもないですよね)や間奏のワブルベースなどクラブミュージック的な要素をちりばめつつ、あくまで先鋭的すぎず適度なポップさ・わかりやすさ・盛り上がりやすさを忘れない、しかしけっしてダサくはならない絶妙なバランスでこの曲は成り立っています。2年前の「JUMBLE TOWN」は寺島さんの最高傑作だと思っていましたがそれを超えたと思います。


2. You Only Live Once / YURI!!! on ICE feat. w.hatano
作詞:西寺郷太 作曲:彦田元気 編曲:彦田元気、冨永恵介
『You Only Live Once』2016.11.23 DIVE II Entertainment
一曲まるまるワンループで押し切るという、なかなか挑戦的な曲です。しかも羽多野さんの声をここまでただの素材として扱ってしまうなんて! 正直こういう展開していかない曲が羽多野渉といういわばオールドスクールの代表のようなひとから出てきたことはけっこう衝撃的だと思います。羽多野さんの歌声ってどこか古風というか大仰というか、あまりいまどきの曲が似合う声という感じではないし、また本人もみずからやりたくてやってるというよりは求められるものを誠実にやるというタイプだと思うので、音楽活動にかんしては制作陣も試行錯誤を繰り返しているというかどういう方向性に進んでいくか考えあぐねてる印象も正直あったのですが、いったんその文脈から切り離されてみたことでまた新たな可能性が見えてきたんじゃないでしょうか。


1. Be My Steady / ギャラクシー・スタンダード
作詞:大森祥子 作曲・編曲:R・O・N
『Be My Steady』2016.2.10 KADOKAWAメディアファクトリー
結局この曲が1位というのはもう2月の段階から揺るがなかった気がします。ドラムンベースなうえに後ろで細かく音が反響しているという時点でどこか悪質な印象を与えそうなものですが、ところどころ入るエレピの音色もあってかこの曲ではむしろおしゃれにすら響きます。また、6人組のキャラクターソングでありながら、メインヴォーカルは2人(もちろんほかの4人にもパートは与えられていますが)という思いきりのよさ。すべてが圧倒的にクールでかっこいい、過剰も不足もなにもない新しさ。ロンくんも宮野さんも豊永さんも男性声優楽曲界ではトップランナーといっても過言ではないくらい最先端を走ってるひとたちだと思います。その才能が合わさるとこうなるのか……という興奮をもたらしてくれた、やはりこの曲をおいて今年は語れないでしょう。



力尽きました。今年は全体的に淡々としているというか、起伏が少なくフラットなテンションで進む曲が多かったような気がします。いや気のせいかも。今年もムービックさんにはたいへん一方的にお世話になりました。来年も楽しみにしています。来年もやるのか? しかし今年はほんとに一気にめちゃくちゃ激戦になった感じがあります。声優楽曲の面白いところは声優が歌っていればなんでも『声優楽曲』になってしまうところだと思うので、よりさまざまなジャンルの曲が聴けるといいなあ。
というわけで12月なので今年買った音楽とか行った現場もそろそろまとめて書きたいところです。書かないと忘れますからね。。とりあえずやっと少年の感想が書ける、、、、(え?)あとカウコン当たったのでうちわ作ろうと思います嬉しい! だれのかって? そんなの愚問ですよ愚問。。