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新しい男性声優楽曲のモードを考える(1)寺島拓篤

あけましておめでとうございます。今年こそ念願の毎月ダイアリー更新を達成したいです! それはそうと、タイトルどおり毎回U-35くらいの若手男性声優、もしくはかれらが出てる作品をひとりまたはひとつ取り上げて、その楽曲的側面について、ひいては2000年代後半以降の男性声優楽曲シーンについて考えるという不定期連載を始めてみたいと思います。飽きたらやめます笑
さて一回目のテーマはこのひとしかいない、寺島拓篤です。男性声優界でもトップクラスにレベルの高い音楽活動をしているひとりであり、寺島さんをスルーしている楽曲派はモグリと言われてもしかたないと思います。と言うとしかし、首をかしげるひともそれなりにいるかもしれません。寺島さんの音楽活動については、あまり世間に伝わってはいないのが正直なところです。
寺島さんは宮野真守鈴木達央と同じ1983年生まれですが、ソロで音楽活動を始めたのは2012年と比較的最近で(その前はG.Addictというグループをやっていました)、ライヴやアルバムはだいたい2年に一回のゆっくりしたペースで制作されています。このことは先のふたりのような音楽活動を自身の主軸に据えている声優たちとは対照的であり、それが良いか悪いかはさておき、あくまで『声優の活動の一環としての音楽活動』というスタンスを強く示唆しています。
さて、寺島さんの代表作といえば2014年10月に発表されたアルバム『PRISM』であることは異論を待たないところでしょう。寺島さんの、というよりも、近年の男性声優楽曲シーンを代表する作品のひとつとすら言っても過言ではありません。この数年、声優界では花澤香菜竹達彩奈牧野由依をはじめとする、ポスト渋谷系人脈の楽曲提供によるコンセプチュアルな作品が目立っていますが、残念ながら男性声優界ではアルバムのリリースが活発でないこともありその波は訪れていません。が、それらの作品に現在いちばん近い感触をもっているのが『PRISM』ではないでしょうか。
寺島さんの稀有なところは、そのオタク的感覚と楽曲派的センスとのぎりぎりのせめぎ合いにあると思います。これまでの楽曲の提供陣だけみれば、ミト、岩田アッチュ、前山田健一、蓮尾理之、CMJKShinnosuke、はたまた中山真斗R・O・N、はたまた木根尚登と非常に多彩でありながら、なおかつおたくメインストリームではない一定の層に強く訴求するメンツが多いです。とくにミトやニルギリス、sfpの蓮尾さんなんかは個人的に最初かなり意外でしたし、このへんのメンツは先述のポスト渋谷系文脈で語ることも可能だと思うのですが、いかんせん男性声優楽曲界ではあまり作曲者の素性とかは興味を持たれてないというか、作家で聴くみたいな層は少ないような気もします。もっとはっきり言うと、これだけの楽曲派好きするメンツが揃っているにもかかわらず、べつに売れてないし、話題にもなってない。というあたりに茨の道を見る気がします……。
それはさておき、寺島さんは本人名義では全曲自分で作詞を手がけています。これは少し検索してもらえばすぐにわかると思うのですが、いわゆるアイドルや声優のちょっと作詞してみましたという域を完全に超えています。言葉の選び方がまず独特だと思いますし、それ以上に音への言葉のはめ方が気持ちよくて、以前も書きましたがゴーストが書いたと言われても納得してしまいそうです。さらにジャケットもいちいち凝っていておしゃれ。が、本人がおたくゆえにその歌詞はすべて漫画・アニメ・ゲームの作品をモチーフにしていると明言されています。当然そこには元ネタとなっている作品を探り当てるという類の楽しみ方があるわけですが、元ネタ探しといえば渋谷系、なんとここで話がつながった! 本人がどこまで意図してるのかわからないくらい絶妙、というかむしろ綱渡り的なバランス感覚で、演者はものすごくオールドスクール(歌い方めちゃくちゃくどい声優歌唱ですしね……)なのに、そのセンスと咀嚼能力によって出てくる音楽が声優としてとても新しい。という、いびつな状態ができあがっていて、わたしはそこにすごく可能性を感じます。結果的にだから売れないんだろうなとも思うんですが……なんなんだろう、ほんと知名度と集客力が全然比例してないですよねこのひと。
そのせいなのかなんなのか、直近の寺島さんはちょっとおたく方向に針が振れすぎているような危惧が……。だって2015年にパラパラって……。2010年代にパラパラやって許されるのは小野さんだけなんです。でもそれでみんな喜んでるんだから余計なお世話かなと思いつつ、いやきっと現場で見たら楽しいんだろうなと思いつつ、いやでもわたしべつに寺島拓篤のファンでもなんでもないし! まだまだ寺島さんには男性声優楽曲シーンで最前線を進み続けてほしいので、あまりおたくに媚びすぎないことを願います。
だいたいこんな感じでオチとかはとくになく続けていきたいと思います。月1か2くらいで更新できたらいいな……。